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掲載日:2019年3月26日
皆様、AYA世代という言葉を聞かれたことはありますか?
昨年から「小児がん」「高齢者のがん」と並び「AYA世代のがん」が国の施策にもあがったことで、メディアなどでも少しずつ取り上げられるようになってきました。
そこで、第41回日本造血細胞移植学会総会にて、現在のAYA世代のがん治療における問題点と今後の課題について講演が行われましたので、皆様にお伝えしたいと思います。
まずは、AYA世代のがんについて簡単にご説明いたします。
AYA世代のAYAとはAdolescent and Young Adultの略語で、子どもと大人の狭間の世代を指します。
国によって基準は様々なのですが、日本では15~39歳までがあてはまるとされています。
最新のがん登録に基づいた統計では、全体の2%ほどがAYA世代にあたります。
割合を見ると決して多いわけではありませんが、AYA世代のがんは治療が難しいと言われていて、その理由はAYA世代のがんの多様性にあります。
AYA世代が罹患するがんは、成人前後で種類が大きく異なります。
成人前は男女ともに白血病が多く、20代後半くらいから子宮がんや精巣がんなどの生殖器のがんが多くなります。
AYA世代がかかりやすいがんでは、抗がん剤や放射線、そして骨髄移植などの治療が選択されます。
入院治療の期間が長くなってしまい、退学や離職をせざるをえない場合が多いというのも、AYA世代のがん治療で難しい点だと言われています。
アメリカでは、2005年に「他の世代の5年生存率は改善されているのに、AYA世代は改善されていない」と指摘されました。
事実、AYA世代に多い急性リンパ性白血病やユーイング肉腫では、15歳を基準に5年生存率が大きく落ちてしまうそうです。
そこで、AYA世代にあった治療法の検証やケア、サポートなどが必要だと、治療法やサポートが見直され実施されるようになりました。
日本では、2009年からAYA世代にあった治療法などの検証が始められたのですが、そこから約10年経った今でも、様々な問題点や課題が残っています。
AYA世代の方ががん治療を受ける上では、次の3つが特に問題視されています。
①最適な治療法
AYA世代にあった治療法が定まっていない、というのがまず1つの問題です。
例えば、AYA世代のがんで特に多い急性リンパ性白血病は、患者が子どもなのか大人なのかによって治療法が異なります。
●子どもの場合:2年間の化学療法
●大人の場合:短期間の化学療法と造血幹細胞移植
しかし、子供と大人の「狭間」となるAYA世代には、どちらの治療を選択するのかの明確な基準が定まっていません。
子ども | AYA世代 | |
---|---|---|
2005年の統計 | 85% | 40% |
最新の統計 | 87% | 58% |
臨床では、子どもと同じ治療法を選択したほうが高い成果が出たそうです。
右の表は、2005年と最新の統計による5年生存率をまとめたものです。
臨床例に基づいた治療が広がることで、少しずつ生存率が改善されています。
②妊孕性への影響
次に、治療による妊孕性への影響です。
AYA世代の年齢、特に思春期に放射線治療や骨髄移植などを受けた場合、ホルモン異常による甲状腺の機能障害や、無月経・無精子症などが起きやすいと言われています。
そのため近年では、放射線量や照射範囲を調節する非破壊的前処置を行ったり、治療開始前に精子や卵子を凍結保存しておくことが少しずつ広まっています。
凍結保存を受けることができる医療機関も、少しずつ増えてきているそうです。
③医療費やサポートの問題
2019年現在、公的な医療費の補助は次のようなものがあります。
世代 | 年齢 | 医療費の補助 |
---|---|---|
こども | 0歳~中高生まで | 医療費の助成 |
20歳未満 | 特別児童扶養手当 | |
高齢者 | 40歳以上 | 介護保険 |
現状では、AYA世代(特に成人後から39歳まで)を対象とした医療費の補助がありません。
また、就職前に罹患した場合、就職をサポートしてくれる制度がまだ整っていません。
登壇していたある方は、大学入学直前の18歳の時に罹患して9ヶ月間の闘病生活を乗り越え、大学にも復学されたそうです。
しかし、体力の大幅な低下や治療による後遺症のステロイド性白内障により、4年間で7回もの転職をされたそうです。
治療を乗り越えたあとの定期的なフォローや就職のサポートは、生存率が改善されてきている今、見直されるべきではないかと思います。
現状ではまだまだ多くの問題がありますが、世界的に進んでいる様々な活動もあり、少しずつ治療法や制度は整ってくれると期待しています。
ですが、私たちにもできることがあると思います。
それはまず、どういった治療方法があるのかなどの正しい情報をキャッチすることです。
講演会でも強調されていたのですが、卵子や精子の凍結保存をご存知なかったり、積極的ではないお医者様も多いそうです。
当事者になるかもしれない私たちがこのことを知っていれば、ご自身だけではなくお子様やお孫様の身に何かが起きてしまったときには、対応ができている医療機関をすぐに探せるはずです。
そして、どれだけ早い段階で異変を見つけられるかも重要なポイントです。
特に思春期のお子様の場合は、検診に抵抗を感じてしまうことも多いそうです。
そのため、お子様のこれからを守るためにも、ご家族でしっかりと話し合ってみることが大切になります。
私たちができることをしっかりと行って、また、臨床も進んでいけば、不治の病と呼ばれなくなる日が近づいてくるのではないかと思います。
AYA世代の対象は学生から社会人までととても幅広いのですが、共通点といえば通学や通勤などで外出の機会が多いということです。
お出かけが多い方には、携帯性の高いゼリーやカプセルがおすすめです。
また、ご自宅では液体タイプ、お出かけ先ではゼリーと、2種類の商品を併用されている方もいらっしゃいます。
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