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掲載日:2016年12月7日
がん治療において、治療の中心となるのが手術・化学療法(抗がん剤)・放射線療法といった三大療法です。
その中でも、化学療法は薬を使って全身のがん細胞を攻撃する事ができるため、手術ができない場合や手術前後にも積極的に取り入れられている治療方法です。近年では、分子標的治療薬というがん細胞の増殖に関わる特定の分子(たんぱく、遺伝子)を狙い撃ちしてがんの増殖を抑える薬の登場により、治癒率の向上や仕事を続けながら治療を受けられる人も増えています。
この分子標的治療薬ですが、一時期は“夢の薬”ともてはやされた時期もありましたが、今では一般的な抗がん剤とは違った副作用の出現も分かってきています。
分子標的治療薬の効果を理解すると同時に、副作用についての正確な知識を得て、早めに対処することが大切です。その知識を持っているだけで、ご本人様と共に闘うご家族が安心して治療に立ち向かうことができるのではないでしょうか。
出現しやすい副作用や症状の強さ、出現時期は薬によって異なり、個人差もあります。分子標的治療薬で出やすい副作用には、皮膚障害、下痢、高血圧などがあります。また、最も注意すべき副作用は薬剤性肺炎と言われています。
●EGFR阻害薬
アファチニブ、エルロチニブ、ゲフェチニブ、セツキシマブ、パニツムマブといったEGFR阻害薬で出現しやすい副作用は皮膚障害、下痢、消化管出血、薬剤性肺炎(間質性肺炎、肺臓炎)です。薬にもよりますが、軽い症状も含めるとEGFR阻害薬では70%~90%の患者さんに皮膚障害が発生することが分かっています。
EGFR阻害薬の皮膚障害では、投与から1~2週間後をピークとして顔、胸などの上半身にニキビのような湿疹が出現し、痒みを伴うことも多いのが特徴です。3週間目以降になると、皮膚の乾燥が強くなり、6週間程から爪の周りが腫れる爪囲炎(そういえん)が起こりやすくなります。
また、薬剤性肺炎は投与から4週間以内に起こることが多いことが分かっています。
●ALK阻害薬
ALK阻害薬であるクリゾチニブで多くの患者さんに出現するのが、吐き気、嘔吐、下痢、便秘といった消化器症状です。また、約60%の方が、視覚異常(二重に見える、欠けて見える、視力低下、かすむ)を感じられます。
●HER2阻害薬
トラスツズマブなどのHER2阻害薬で最も注意が必要なのが、心機能障害です。この副作用はまれではありますが、心不全を起こすケースもあるので、狭心症や心筋梗塞などの既往歴がある場合は必ず担当医に伝えるようにしましょう。点滴投与を受けた直後、あるいは24時間以内に発熱や血圧の急低下、インフュージョン・リアクションなどが生じる事があります。インフュージョン・リアクションなどの輸注関連反応は初回投与で起こりやすいと言われています。
●HER2阻害薬
ベバシズマブ、ソラフェニブ、レゴラフェニブなどの血管新生阻害薬では、鼻や口の中、消化管といった粘膜からの出血、高血圧、たんぱく尿が出やすい傾向があります。また、ソラフェニブ、スニチニブ、レゴラフェニブといったVEGFRを標的としたマルチキナーゼ阻害薬は、EGFR阻害薬の副作用とは別の種類の皮膚障害である手足症候群が80~90%の割合で投与直後に出現します。
魚の目やタコ、水虫、しもやけといった皮膚病は手足症候群の悪化の原因となるので、分子標的治療薬の投与前に治療すると良いみたいです。
●mTOR阻害薬
エベロリムス、テムシロリムスといったmTOR阻害薬で出やすい副作用は口内炎です。発疹、吐き気、食欲不振、薬剤性肺炎が起こるケースも報告されています。
●BCR-ABL阻害薬
イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブなどのBCR-ABL阻害薬では投与後1週間程から、10~40%の患者さんに発疹が出現します。その他、浮腫みや吐き気、まれに肝機能・腎機能低下といった副作用が起こることもあります。
BCR-ABL阻害薬では、グレープフルーツ、サプリメントのセントジョーンズワート、解熱鎮痛薬のアセトアミノフェンは相互作用を起こす危険があるため、摂取は控えるようにしましょう。
●膜状分化抗原標的薬・その他
リツキシマブでは、輸注関連反応(アレルギー反応、インフュージョン・リアクション)の他にも骨髄抑制や心機能障害、薬剤性肺炎、脳血管障害、腎不全が起こることもあります。デノスマブは、頻度は低いですが低カルシウム血症(約6%)、顎骨壊死(約2%)が出現する恐れのある薬です。
それ以外にも、ニボルマブなど次々と分子標的治療薬の研究は進み承認されている薬も増えてきています。治療の選択肢が増えることは、とても心強いですよね。次回は、分子標的治療薬で出現した副作用への対処方法をご紹介いたします!
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