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掲載日:2019年9月5日
がん治療やがんという病気そのものが、認知機能に影響を与える可能性があることをご存知ですか?
高齢化社会といわれる近年、増えてきているがん治療中の障害の一つに“認知機能障害”が挙げられます。
がんそのもの、またはがん治療に伴う認知機能障害はCRCI(cancer-related cognitive impairment)と呼ばれ、海外での研究は進みつつありますが、日本での認識は医療者や患者自身にとって、低いことが現状です。
自覚症状があったとしても軽微な場合、患者さん自身も相談しづらく、医療者やご家族の方も気付きにくいという点から、二次的な不安や抑うつに繋がってしまう可能性もあります。
これからがん治療を受けられる方、現在すでに治療中の方もCRCIという認知機能障害について知っておくことが大切です。
がん治療の影響による認知機能障害は、特に化学療法中の副作用として現れることが多くあります。その一方で、治療前にもがん患者さんの約30%において認知機能障害が起こるという報告もあります。
がんの診断後に生じた不安、がん自体により影響を受けることで治療前から言語記憶や反応時間などに障害が認められたという結果も出ています。
脳への放射線照射による認知機能障害では、言語性記憶、空間認知能力、注意機能などが障害されているという報告がある他、気分の変動なども認められています。発現時期は急性・早期・晩期に分けられ、急性障害は照射してから数日~数週間、早期障害は1~6ヵ月後、晩期障害は6ヵ月以上経過して起こります。
特に晩期障害は、不可逆性かつ進行性であると言われています。
抗がん剤の中でも、特に脳腫瘍で使用される抗がん剤は脳関門を通過するため中枢神経系にダメージを与えます。さらに抗がん剤治療に伴う心臓毒性によって脳の血流が低下することでも認知機能へ影響をもたらす場合があると考えられています。
また、ホルモン療法においても、ホルモンレベルの変化によって認知機能障害が認められます。特に、エストロゲンは言語性記憶などに重要な役割を果たしているため、乳がん治療における抗エストロゲン療法によってエストロゲンレベルが減少する事で認知機能の変化も引き起こされると考えられます。
CRCIは医療機関によるサポートにあわせて、日頃からのセルフケアの実践も推奨されています。
★認知機能障害へのセルフケア★
1、必要なことを忘れないように書き出す
2、ストレスや注意疲労を減らす
3、リラクゼーション
4、定期的な運動を行う
5、クロスワードパズルなどを行い、精神面の刺激を与える
CRCIに対するマネジメント法は明確に確立はしていませんが、その対処方法については検証が行われているそうです。
また、2007年に施行されたがん対策基本法に基づき策定されたがん対策推進基本計画の中でも“がん患者およびその家族への心のケアの重要性”が強調され、精神腫瘍医の育成が必要であることが明記されました。
CRCIの場合、現在どのような治療を受けているのかといった状況等を踏まえて対処しなければなりません。そのためには、がん治療の知識を持った精神科の先生と主治医との連携が必要です。
「以前と何かが違う・・・。」という不安を感じた時は、迷わず主治医に相談してください。
2019年9月5日
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